2009年01月14日

『泉鏡花の夜叉ヶ池』(武蔵屋組)花組芝居 青山円形劇場

「で、君はそれを信ずるかい」
「信ずる、信ずるようになった」

13年振りの再々演。また、このやり取りで泣いた。やっぱり花組の『夜叉ヶ池』好きだなあ。泉鏡花の演出は、加納幸和がいちばん好きだ。狂騒のないきれいなだけの鏡花なんて、面白くもなんともない。
幕開きに、晃と百合が鐘楼を囲む縄を外して結界が解かれ、学円が物語の中へ入って来る。幕切れで、白雪姫が学円に支度をさせて物語の外へ送り出し、鐘楼の縄をかけ直して結界を閉じ、去っていく。ケ→ハレ→ケの流れが美しい。初演時に、ある方に能と同じ構造であると教えられ、なるほどと思った。ワキの学円はまさに学僧である。
1991年の初演が、初めて観た花組芝居の舞台だった。今思えば、退団された松本文彦さんの最後の公演でした。95年の再演でも百合以外は大きな変更はなく、今回初めて全面的な配役変更を行って、Wキャストでの公演となった。武蔵屋組の配役は、萩原晃(水下きよし=初演時と同じ)、百合(堀越涼)、山沢学円(桂憲一)、白雪姫(山下禎啓)。例によって、山下さん見たさで武蔵屋組を選んだのだが、山下さんの白雪姫が座長の写しに徹しているようであったため、かえって加納さんも見たくなって、結局もう一度、那河岸屋組も見に行くことにしてしまった。ああ、でも、山下さんの道成寺は緩やかで艶気もあって素敵でした(はあと)。
他の初役の役者たちも、旧公演の各役をよく研究したんだろうなあという感じ。鯉七(美斉津恵友)なんて、最初は北沢さんと間違えたほどだ。演出が基本的に変わらないということもあるだろうが、花組の『夜叉ヶ池』として“型”を定めようとしているのだと思う。
旧『夜叉ヶ池』では、佐藤誓さんの学円が好きだった。長いこと、他の役者が演じるところを想像できなかったのだが、『KANADEHON忠臣蔵』で由良助、『怪談牡丹燈籠』で円朝を演じた桂さんを見て、今なら学円が出来ると思った。今回、その通りの配役となって、とても満足。そう、『夜叉ヶ池』のポイントは学円なのだ。彼が境界上に立つことで、ハレとケの違いがはっきりする。この役をできる役者がいないと、成り立たない話だと思う。誓さんの学円は、あくまでケの世界の人だが、精神が素直で柔軟な人という感じ。桂さんの学円は、あやうくハレの世界にとどまりそうな、むしろ晃になりたかった人に見えた。
新人さん(いつまでも新人と呼ぶのもアレだが…)の中では、万年姥の谷山さんが良かった。いつも色モノ役が多いので、余計に、おおっ!と(苦笑)。

さて、新人公演的な那河岸組はどんな舞台になるか、こちらも楽しみです。
posted by kul at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 演劇/舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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