脚本:井上ひさし、演出:蜷川幸雄。ホンキの古田新太を見たくて観に行った芝居だったが、何より印象に残ったのは、井上ひさしの凄さだった。
古田新太について、大ファンではあるのだが、この頃はいつも、既に持っているものの中から演技しているように感じていた。そういう役ばかりをふりたくなる気持ちはわかるのだけれど。今回、外部、しかも蜷川演出での主演で、何か別のものが出てくるんじゃないかと期待しながら出かけた訳です。普段、「俺は己の力でのし上がる」ということに微塵も疑いを持ってない役が多いが、今回の杉の市は「上がれるかどうかはわからないけどやるんだよ」という感じ。いっぱいいっぱいで頑張っている者のいじらしさは見えた。
杉の市の古田新太と、盲太夫の壌晴彦を除くと、ほとんどの役者が数役を兼ねる。塙保己一の段田安則が良かった。最後の、松平定信へ献策を行う場面。自分で、誰を怒り憎んでいるのかわからなくなっている感じ。自分と逆の道を辿り結果的に盲の評判を下げることになった杉の市(二代目藪原検校)なのか、盲の台頭を排除しようとする晴眼者なのか、杉の市と同じ盲である自分に献策をさせる松平定信なのか、晴眼者の権力者の側近くに侍る自分なのか。
お市の田中裕子、生で観るのは初めて。きれいで色っぽかった。山椒大夫を語る場面が良かった。
今回、細目の古田はともかく他の俳優陣は皆ギョロ目に下瞼がふくらんだ容貌で、座頭達のどぎつい物語を際立たせるには、皮肉っぽくもよいキャスティングだったと思う。出ずっぱりで語り続けの壌晴彦が素晴らしかった。赤崎郁洋のアコースティックギターによる津軽三味線風(?)BGMも。
どぎつい物語のはずなんだよね。でも観終わって案外あっさりした印象なのは、笑いや軽みを入れた演出だったからか。役者vs演出vs脚本で、いちばん勝ったのは脚本の面白さだったかなと。
2007年05月17日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/42163463
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック
http://blog.seesaa.jp/tb/42163463
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック



