2007年09月08日

「若冲とその時代」展 千葉市美術館

面白かったので長いのだ。

千葉市美術館がどこにあるのかと調べたら、千葉市中央区役所の中でした。公式サイトの解説:
建物を象徴するのは1-2階のさや堂ホールで、昭和2年に建てられた旧川崎銀行千葉支店の建物を保存・修復、さらに現代の文化活動に対応できるスペースとして改修されました。この市内に残る数少ない戦前の建物を包み込むように建てられた美術館は、平成6年に竣工、翌年の開館時より新旧の建物が一体となってユニークな文化創造の場を提供しています。

旧い建物の設計は、川崎銀行建築部。曳屋して改修したようです。面白いね。1階のさや堂ホールは円柱の並ぶネオ・ルネサンス様式、良い感じ。

納富さんと落ち合う予定で先に行き、併催の「都市のフランス、自然のイギリス」を見ていたが、書籍や新聞の小さな挿画が大量にあって見切れなかった…。あれは通わないと無理だ。
途中で切り上げて、下の階の「若冲とその時代」へ。納富さんと合流。両方見て800円、「若冲とその時代」だけだと200円。安い(交通費がかかってるけど)!

入口で若冲の鸚鵡がお出迎え。同じ白い鸚鵡を描いた絵は3枚あるが、今回のは正面向き。あとの2枚は後ろ向きで止まり木にとまっている。どこのかな、と思ったら、美術館の所蔵品だった。今回は、第2部を除く展示の多くが所蔵品。いいモノ持ってるなあ、いいなあ。

上の階でB5だのハガキより小さいのだのとコマコマした作品を見ていたのに、階下の最初の展示室にあるのは屏風絵。サイズのギャップに、つい笑ってしまう。第1部は「若冲の時代 みやこの画家たち」。
屏風で良かったのは、芦雪「群仙図」。右隻から左隻へ、雲に乗って大勢の仙人がやってくるのだが、右隻の奥の方などは下絵か?と疑うほどテキトーな線(笑)。実にテキトーに楽しく線描きしただけで、色も墨も塗らずに金砂子だけ散らしてある。でも、テキトーに描いたと見せておいて、仙人たちの顔にはちゃんと表情があるし、雲の下の波濤のうねりだとか、左隻の遠景の松の木だとかはやけに上手いのだ。一体どうして、誰に頼まれてこんな作品を描いたのか。不思議不思議。
芦雪はほかにも良いのがあって、「松竹梅図」三幅はとても格好良い。欲しい。濃い墨でぽってりと松竹梅を描いた上に、ほんの少しだけ緑や赤をたらし込む。
「花鳥蟲獣図巻」もかわいい。解説を見たら、曽道恰が手前の竹を描いて、芦雪は曽道恰の家に何度も通って酒を馳走になりながら、他の花とか子犬とか鳥とか虫とかを描いていったらしい。これまた成り立ちが不思議な作品だが、子犬がものすごくかわいくて、あとのことはどうでもよくなる(笑)。

芦雪とくれば応挙先生。応挙は「鉄拐蝦蟇仙人図」双幅が良かった。鉄拐仙人が吹き出した分身とか、蝦蟇仙人の頭に乗っかってきょとんとしているガマとか、妙にかわいいのだ。
屏風の「秋月雪峡図」は、若干すべり気味。左隻の雪峡図は雪の白さを目立たせようと黒い部分が黒過ぎて、やり過ぎな感じ。右隻の秋月図のふんわりした空気感は好きだ。月が地平線より下から昇ってきてるけど(笑)。
よくわからないのが「群鳥・別離・鯉図」三幅で、応挙に絵を依頼してこれが送られてきたら、自分だったら怒るだろうというシロモノ。弟子が描いたにしても、ヘタだなーと思う。鯉図だけは笑えるからいいけど。バビューン!と鯉がロケットに乗って滝登りしていきます。

呉春「漁樵問答図」ほのぼの。有名な人なのに、あまり作品を見たことがない。これから色々見られるといいな。
呉春の異母弟、松村景文がいくつかあったけれど、こちらはあまり好みでない。部分部分は上手いが手元しか見てないようで、手を抜く/描き込むの全体のバランスが悪い。近代日本画のよくわからない構図のルーツみたいな感じ。

岸駒・岸岱親子が1点ずつ。岸駒「鶴図」、水っぽい雪の積もった重たい感じ。岸岱「群蝶図」、金刀比羅さんのは金箔に描かれて華やかだったが、これの背景は薄い青のグラデーション。少し寂しい静かな絵。こういう“力の抜きどころ”を知っている丁寧さなら良いのよ。

曽我蕭白が3点。これがすさまじく良かった! 「竹に鶏図」は大きな掛け軸なのに、蕭白が描くと画面が小さく感じる。うりゃーっと力技の尾羽。立派な蹴爪。
「山水図(林和靖図)」も良かったが、何と言っても「虎渓三笑図」! 霞のたなびく横線、斜線とカギ型を連ねた岩山、縦に白くまっすぐに降りてくる滝。線にあふれているのにうるさくならない。蕭白の山水画は、とてもメタリックで静かだ。格好良いのよ。メタルプレートに彫ってほしい。

第2部は「若冲の時代のハイカラ趣味 南蘋派の画家たち」。
南蘋派にしてはあまり病的でないなーという感じだったが、南蘋派全盛から少し時代の下った岡本秋暉が良かった。白い花を描くのに緑を混ぜてみたり、普通は白やピンクで描くだろう牡丹を紺色にしてみたり、色遣いが面白い。
あと、諸葛監「受天百禄・群仙祝寿図」が、ちっとも南蘋派らしくないのだが、デッサンの狂い方とか妙な構図とかが変で面白かった。劇画を見て間違った筋肉の描き方を覚えてしまった人、みたいな。トンデモすぎて逆に素敵だ。

最後の第3部が「そして若冲 色に酔い墨に浸る」。
いちばんは「寿老人・孔雀・菊図」。なるほど若冲という画題で、ちょっと面白い構図でラフに描いて、実は筋目描きが細かくて、という見慣れた感じの絵だが、3幅並べた雰囲気がとっても良いのだ。床の間に描けたところを見てみたい。「雷神図」も好き。どうっと吹いた大風に、雷さまも転がったような逆立ちした構図。手ぬぐい作ってほしい。
最後を締める「月夜白梅図」は、若冲のこの画題にしては素直な絵。満月にあまり梅の枝が重なっていなくて、左上の空間が空いているせいか。バークコレクションや動植綵絵の同画題では、もっと梅の木がうねうねと画面を侵食しているが、こちらの梅の木はまだ植物である。家に飾るならこれですね。

「若冲とその時代」って、いかにも流行りに乗ったようなタイトルだなあと斜めに見て出かけたが、思いのほか面白い内容だった。それにしても、千葉市美術館はいいモノ持ってるなあ、いいなあ。
posted by kul at 23:59| Comment(0) | TrackBack(1) | 美術展/イベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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