2009年01月22日

『リチャード3世』赤坂ACTシアター

「いのうえmeetsシェイクスピア」と冠した、PARCOプロデュース公演。先行予約で外れたので行かないつもりだったのだが、思いがけなくチケットをいただいて出かける。お二方、どうもありがとうございました。

先に森川久美の中編『天(そら)の戴冠』を読んでいたため、『リチャード3世』を初めて読んだときには、こんな醜悪奇怪な悪党だったのかーとびっくりしたものです。『天の戴冠』は、「もしもリチャードが善人だったら」と裏返しに解釈し直した話だったのだ。もっとも、今では、シェイクスピアの創作は、ヨーク朝後のテューダー朝期に意図的に流された悪評に基づくものと言われているようですが。

何にしても、長い。休憩20分含め、3時間半。台詞も長い。前半はちょっとダレた。
戦車に銃、鉄道、バイク、モバイルPC、携帯電話、テレビ等などが小道具として登場するのは、権謀術数を古色蒼然としたものに見せないための工夫か。衣装はUKロック的というのか、原色・サイケ調。大衆へのプロパガンダの場面では舞台上にビデオカメラを持ち込み、たくさん配置されたモニターでワイドショーのLIVE映像のように見せる。
リチャードの悪巧みはICレコーダーへ吹き込み、リチャードとマーガレットが撒き散らす呪詛の言葉はネットに書き込んでいる風に見せるのは面白かった(でもリチャードの「死ね死ね…」は、やりすぎのような)。とにかく台詞、特にモノローグが膨大なので、飽きさせないようにするのは大変だったと思うが、ちょっと演出が台詞に負けたかなーと思う。ただでさえ早口なのに、キーボードをカチャカチャ叩きながらしゃべるのは気がそがれる。モニターとSEだけで良かったんじゃないかしらん。
リチャードが、やっぱりよくわからない人物だった…古田新太の女たらしで口先八寸な部分は利いてたが、その底に何があるのか。単に生きること・女・社会・世界への呪詛だけとも思えないんだけれども。難物だなあ、このキャラクター。
男優陣は人数も多くて(苦笑)いまいち印象が薄い中、バッキンガム公役の大森博史は儲け役だったか。この芝居は、女優陣の方が感情に結びついた台詞が多くて得かも。殊に、マーガレット役の銀粉蝶が光っていた。終盤、エリザベス役の久世星佳との掛け合いがド迫力でした。

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赤坂ACTシアターに行くのは、なんと、2003年解体公演の『Villa Villa』以来だった。DE LA GUARDAは、今年、新作『FUERZABRUTA』を引っさげて来日すると聞いたが、いつだろう? まあ、夏だよね(笑)。さすがにずぶぬれになる度胸はないが、また楽しく踊りたいです。着替え持参を忘れずに!
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2009年01月21日

『夜叉ヶ池』余談

余談ながら、『夜叉ヶ池』では、BGMに懐かしい曲が使われているのも好きな理由のひとつです。1980年代のサントリー ローヤルの名作CM(PL.杉山恒太郎 C.長沢岳夫 P.高崎勝二)で流れていた、マーク・ゴールデンバーグの不思議な曲。『鞄を持った男』に収録されているが、今探したら見当たらないよ…またCDが行方不明だ…。

●ランボー篇(1982)「剣と女王」


●ガウディ編(1984)「オルフェ」


あと、ファーブル編(1985)の「漂泊者」もゴールデンバーグの曲。ビデオがYouTubeで見つからなかった。

サントリー ローヤルCMの同シリーズには、マーラー編もあった。こちらのBGMはもちろんマーラーで、交響曲『大地の歌』〜第3楽章「青春について」。歌は李白の詩が元ですね。『宴陶家亭子』と云われるが、マーラーの歌詞は下敷きにした訳詩集の誤訳に基づくとか(笑)。

●マーラー編(1986)0:59辺りから


この一連のCMシリーズは、映像もナレーションも本当に素晴らしかったのだが、中でもランボー編は子供心(当時11歳)に衝撃でした。自分の嗜好を決定付けたと言っても過言ではない。同年代には、そういう人が多いんじゃないかと思います。
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『泉鏡花の夜叉ヶ池』(那河岸屋組)花組芝居 青山円形劇場

席についてみたら、隣席が友人だった。びっくり。
Wキャストの那河岸屋組配役は、萩原晃(小林大介)、百合(二瓶拓也)、山沢学円(秋葉陽司)、白雪姫(加納幸和)。若手公演の趣で、押さえ役として座長が入る。演出が18年前とほぼ同じであることを考えると、全体の雰囲気としては、こちらの方がドタバタ感や初々しさ、青臭さにすんなり納得がいくように思われる。
秋葉さんの大きな役は初かも? 桂さんのものより、佐藤誓さんに近い感じ。地に脚がついた学円。小林さんは格好良いんだが、晃のような純粋一途な役よりも、もう少しすねたところのある役の方が似合うのではないか。これはまったく、上手い下手とは関係なくて、所謂「ニン」が合ってるかどうかということなのだけれども。伴蔵(『怪談牡丹燈籠』)とか恋松(『歌舞伎座の怪人』)の印象に引きずられているか?
今回の公演では、那河岸屋組の白雪姫のこしらえのみが以前の衣装から変更されていて、原作の指示に近いお姫様風になった(武蔵屋組のは、以前からの龍神風)。加納さん的な白雪姫は加納さんがやるから良いのであって、武蔵屋組の山下さんには山下さんの白雪姫をやってほしかったなあ、と改めて思ってしまった。

この日のゲストは、与一に関智一さんと、伝吉には冬場は家業の手伝い中(?)の八代さん。八代さんの白雪姫も見てみたい。
あ、前回の武蔵屋組のゲストは、与一に江戸川卍丸さんと、伝吉は植本潤&江戸川卍丸でした。篠井さん、小森谷さん、木原さんが登場の日もあったんだよなあ。見たかった。懐かしいな“8時半の男”(=木原さん。天気予報の収録の後に劇場へ駆けつけていたため)。演出や、最近は少なかったお遊び、ゲストを含め、ちょっと同窓会や懐古趣味的なところもある公演でした。そういう中で、新人にきちんと劇団の芝居を継がせていこうとしたのは良いことだったと思います。
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2009年01月20日

『冬の絵空』キューブ 世田谷パブリックシアター

作:小松純也、演出・上演台本:鈴木勝秀。1987年に劇団そとばこまちで初演された戯曲だが、この公演は観ていない。今回のキャストには、元そとばこまちの生瀬勝久と八十田勇一が参加。で、関西演劇繋がりで(?)新感線の橋本じゅんと粟根まこと、新感線じゃないけど前田悟も参加。公演自体が、西梅田のサンケイホールブリーゼのこけら落とし公演として企画されたもの。大阪から各地を廻って、最後が東京での公演となっている。休憩15分を含め2時間50分の長い芝居。

忠臣蔵の舞台裏を描き、とてもとても面白かったのだが、沢村宗十郎役の藤木直人のところが残念な感じ。いきなり歌舞伎役者の役は難しいだろうが、周りが上手いだけに、ごめん、ちょっと辛かった。しかし、偽物を本物と信じたがった人達の話なので、宗十郎の偽の内蔵助が本物らしく見えてしまうと話の構造にそぐわなくなるのだろうか、とも思えてしまって、あれはあれで演出意図的には良かったということになるのだろうか、とか。よくわかりません。ネタバレになるけれど、屑の己が本物になるために、本末転倒した仇討に出かけて行く赤穂浪士が怖い。
橋本じゅん(大石内蔵助)のまじめな芝居をたっぷり観られて、しかも終盤は生瀬勝久(天野屋利兵衛)とガチで対決とくるのだから堪らん。お腹一杯。満足。
浅野内匠頭役は中村まこと。この、何とも言えない嫌ぁーな感じ、相手の神経を逆なでする感じを意図的に出来ているのならすごいと思う。
ほかに、シロ役の片桐仁が良かったです。狛犬の被り物(兜?)のデザインもされたそうで、才人ですね。お軽役の中越典子も、声の違いを作ろうと頑張っていた。面白い女優さんかも。

幕切れの桜の木が美しかった。ネット(?)に枝を描いて花をつけて、何枚か吊るしてあったのだろうか。スズカツの舞台は相変わらず綺麗です。今回の美術は二村周作。

元の戯曲は、小松純也が20歳で初めて書いたものだそうだ。読んでみたいが、何かに収録されてるかなあ。
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2009年01月15日

志の輔らくご in PARCO

今年もチケットを取っていただいて、初笑いは志の輔らくごにて。
風水で今年のラッキーカラーだというエメラルドグリーン、というか鶯色の背景の中に高座が置かれて、座布団の紫色が映える。志の輔さんも鶯色の着物で登場。
一席目は新作の「ハナコ」。偽装問題を皮肉って、疑念のないように何事もあらかじめお断りしておく温泉宿の噺。相変わらず上手い! 「ヨーデル食べ放題」でまた笑う。
橋掛りが用意されて、二席目「狂言長屋」。以前に聞いたときよりも、長屋の衆の与太話が少し刈り込んであるか? 独演会ならではの仕掛け(狂言との融合)が噺の中に溶け込んで、見事な演出だと思う。
中入り後は「柳田格之進」。志の輔さんで一度聞いたことがあると思うが、どこでだったか。地味目の人情噺をじっくり聞けるのが良い。エンディングをどうするか、なかなか難しい噺だと思うが、志の輔版では、柳田が帰参が叶うと同時に娘を受け出していて、二人連れ立って萬屋を訪れ、碁盤を斬る。矛盾のないように、後味が良いように、という終わり方。
とても贅沢をしたような気分で、気持ちよく帰る。
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2009年01月14日

『泉鏡花の夜叉ヶ池』(武蔵屋組)花組芝居 青山円形劇場

「で、君はそれを信ずるかい」
「信ずる、信ずるようになった」

13年振りの再々演。また、このやり取りで泣いた。やっぱり花組の『夜叉ヶ池』好きだなあ。泉鏡花の演出は、加納幸和がいちばん好きだ。狂騒のないきれいなだけの鏡花なんて、面白くもなんともない。
幕開きに、晃と百合が鐘楼を囲む縄を外して結界が解かれ、学円が物語の中へ入って来る。幕切れで、白雪姫が学円に支度をさせて物語の外へ送り出し、鐘楼の縄をかけ直して結界を閉じ、去っていく。ケ→ハレ→ケの流れが美しい。初演時に、ある方に能と同じ構造であると教えられ、なるほどと思った。ワキの学円はまさに学僧である。
1991年の初演が、初めて観た花組芝居の舞台だった。今思えば、退団された松本文彦さんの最後の公演でした。95年の再演でも百合以外は大きな変更はなく、今回初めて全面的な配役変更を行って、Wキャストでの公演となった。武蔵屋組の配役は、萩原晃(水下きよし=初演時と同じ)、百合(堀越涼)、山沢学円(桂憲一)、白雪姫(山下禎啓)。例によって、山下さん見たさで武蔵屋組を選んだのだが、山下さんの白雪姫が座長の写しに徹しているようであったため、かえって加納さんも見たくなって、結局もう一度、那河岸屋組も見に行くことにしてしまった。ああ、でも、山下さんの道成寺は緩やかで艶気もあって素敵でした(はあと)。
他の初役の役者たちも、旧公演の各役をよく研究したんだろうなあという感じ。鯉七(美斉津恵友)なんて、最初は北沢さんと間違えたほどだ。演出が基本的に変わらないということもあるだろうが、花組の『夜叉ヶ池』として“型”を定めようとしているのだと思う。
旧『夜叉ヶ池』では、佐藤誓さんの学円が好きだった。長いこと、他の役者が演じるところを想像できなかったのだが、『KANADEHON忠臣蔵』で由良助、『怪談牡丹燈籠』で円朝を演じた桂さんを見て、今なら学円が出来ると思った。今回、その通りの配役となって、とても満足。そう、『夜叉ヶ池』のポイントは学円なのだ。彼が境界上に立つことで、ハレとケの違いがはっきりする。この役をできる役者がいないと、成り立たない話だと思う。誓さんの学円は、あくまでケの世界の人だが、精神が素直で柔軟な人という感じ。桂さんの学円は、あやうくハレの世界にとどまりそうな、むしろ晃になりたかった人に見えた。
新人さん(いつまでも新人と呼ぶのもアレだが…)の中では、万年姥の谷山さんが良かった。いつも色モノ役が多いので、余計に、おおっ!と(苦笑)。

さて、新人公演的な那河岸組はどんな舞台になるか、こちらも楽しみです。
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2008年12月11日

『グッドナイト スリイプタイト』PARCO劇場

三谷幸喜の新作。中井貴一と戸田恵子の二人芝居。ある夫婦の30年間を、寝室を舞台に行きつ戻りつしながら語っていく。
初めに離婚という現在が示されることもあって、各場面でクスクス笑いながら、妻の心情に同調して少しずつ割り切れない苦いものが溜まっていく。熟年離婚ってこうやって起こるんだなあと腑に落ちる、サンプルケースのようなお話。登場人物二人が「あなた」「きみ」で呼び合って、名前が出てこないのも、話を客の側へ寄り添わせる効果あり。若い人より、40〜50代の夫婦で観るべきかも。
妻の職業が場面ごとにころころ変わっていって、どういう人物なんだ?!と思わせるが、話が進むにつれて繋がっていくのが巧い。起こったことすべてをポジティブな要因に転換していける(そして都合の悪いことは忘れられる/笑)人だから、この旦那に30年つき合えたんだなーとか思ってしまった。元気で積極的な戸田さんと、優しくて優柔不断な中井さんの対比に説得力がある。中井さん、メイクを変えずに30年間を演じ分けられるのが巧い。
二人芝居だが、舞台上には生演奏の奏者4人が上がっていて、ところどころでチョコッと二人に絡んでくる。その使い方が、気が利いていて可愛らしい。

観終わって、何と言うか、相変わらず巧いなあと感嘆するしかないような舞台でした。三谷芝居は、観ていて、「世界は大変だけどそんなに悪いようにはならない」という気分になれるのが良いです。
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2008年10月20日

2008年09月08日

『怪談牡丹燈籠』花組芝居 あうるすぽっと

東池袋に新しくできたライズアリーナビルの中に、豊島区立中央図書館と、同じく区立の舞台芸術交流センター あうるすぽっとがある。劇場の方に初めて行ってきた。席数は300人程、こぢんまりして使いやすそうな劇場。

花組初の三遊亭円朝もの。牡丹燈籠は、お露新三郎の怪談部分が有名で、そのほかに新劇や歌舞伎の大西信行脚本では伴蔵お峰の因果応報譚が中心となる。しかし本来の落語で核となるのは、大西版ですっぱり削除されてしまった黒川孝助の仇打ち話なのだ。
これまで『婦系図』や『KANADEHON忠臣蔵』など花組の“原作を全部やります”シリーズ(と勝手に呼んでいる)は、あ、こんな話だったのか!と改めて気付かされ、とても面白かった。今回も期待にたがわぬ出来でした。
お露新三郎、伴蔵お峰、飯島家中が交互に出てくるが、場面転換をスムーズにするため、セットはすべてL字型に固定されたたくさんの戸板の並べ替えで表わされる。『忠臣蔵』の討ち入りの場面では1枚ずつの戸板をたくさん使って屋敷内を表していたが、今回はその応用。壁になり、障子になり、襖になり、屏風になり、どんどん変化する。

お露(大井)・新三郎(美斉津)パートは、ややコミカルに。お露とお米(磯村)の「からーん」「ころーん」の掛け合いが可笑しい。牡丹燈籠(谷山)もいるだけで可笑しい。
伴蔵(小林)・お峰(加納)パートは世話物。少し前に仁左玉で見たところなので、もうちょっとイチャコラ(笑)と可愛くしてくれても良かったが、ここはあっさり小悪党として描く。むしろ源次郎(各務)・お国(八代)が可愛らしい。八代さんはほんとに、憎々しくて、でも愛嬌があるという役が上手いなあ。
飯島平左衛門(水下)と孝助(丸川)はまっすぐな主従関係。水下さんに男気のある役をやらせるのは反則です。格好良すぎる。丸川さんは抜擢に応えた。孝助のパートは基本的に勧善懲悪の物語なのだが、最後の仇討場面の凄惨さが、思い詰めてしまった人の人間性を吹っ飛ばした恐ろしさを見せていて、実は善も悪もほどほどが良いというのが真の結論なのかもしれない。
そのほか、若い世代には新人を配置、老け役はベテラン勢で固めて、バランスの良い座組だった。植本さんが外部出演(?)で不在だったが、今回はこれでちょうど良かったかも。
円朝役は桂さん。由良之助をやってから、何だかひとつ山を越えた気がする。これからこういう流れを導いていく役が増えるんだろうか。今なら学円@夜叉ヶ池ができそう。

やっぱり花組は好きだなあ。いちばん、自分の中にすっと入ってくる。15日までです。見に行ってください。
パンフレットに加納・植本&白石加代子の鼎談が載っていたが、今日はその白石さんをお見かけした。白石さんの牡丹燈籠も観に行きたい。
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2008年08月15日

『志の輔らくご ひとり大劇場』 国立劇場

昨年に続き、今年も国立大劇場での志の輔らくご。今回も背景は半円の白い壁だったが、昨年のようにその壁をスクリーンとして使い倒すのではなく、歌舞伎の舞台としての国立劇場を上手く使った演出だった。
演目は、北京五輪風の落語実況を枕に、落語家立川志の輔の自己紹介のような「生まれ変わり」。あっち行ってこっち行ってを上手く落とし込んであるなあ。
回り舞台が回って、出囃子の方々が登場。演奏の後、もう一度回って高座には板付きで志の輔さん。泣く・怒るのポイントは誰しも似通っているけれど、笑いのポイントだけは人によって全然違う、何がウケるのかわからないのが難しい、というところから「三方一両損」。…確かに、どうして大岡様がわざわざ一両損をしようと出しゃばって来るのか、不思議な話ではあるね(笑)。笑いを解説することほど、いたたまれないものはない、という落語家の自虐のようなサゲ。
中入り後は、「中村仲蔵」。落語家の身分は前座、二つ目、真打の三段階だけ。噺を覚えたらすぐにお客さんの前で修行する、ありがたくも怖い世界。歌舞伎の身分は、現在こそ名題下と名題だけだが、その昔はもっと多くの階層に分かれていて、門閥の外の役者が名題となるようなことはほとんどあり得なかった…というところから始めて、金井三笑との仲違い説は取らずに、素直に立志伝中の成功譚として物語る。考証はともかく、人情噺としてはこの方がきれいにまとまる気がする。
雨宿りの浪人から、斧定九郎のこしらえのヒントを得るところ。舞台を失敗したと思い上方へ去る道すがら、夢中で今日の定九郎を語る芝居帰りのお客達に行き逢うところ。ぐぐっと引き込まれて、ああ良かったなあ!と思える。
仲蔵が定九郎を演じる場面では、舞台上手にはツケ打ちさんが現れ、花道に照明が当たり、揚げ幕の鈴の音がチャリンと鳴る。思わず花道の方を見るが、そこに役者が登場する訳ではない。でも、定九郎が本当に見えるようでした。志の輔さんの語りに、歌舞伎の舞台としての小屋の場の力も相まっての効果。この演出は素晴らしかった。背景のスクリーンはエンディングでのみ利用して、定九郎のこしらえと見得を映像で見せて幕となる。この使い方も、昨年からのマンネリとならずに上手かったです。
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2008年08月11日

『女教師は二度抱かれた』シアターコクーン

市川染五郎、大竹しのぶを主演に迎えた、松尾スズキの新作。舞台奥でバンドの生演奏付き。
場面場面はナンセンスで可笑しいが、つながりが弱くて、音楽と役者の力技で無理矢理まとめた感じ。バラバラになりそうなところが、とりあえずまとまってるのがすごいとも言える。案外あっさりした後味。どこに着地点を持ってくるのかと思ったら、監禁状態での見る/見られるところに落ち着いたので、それならニッソーヒ(日本総合悲劇協会)として作ってもっとダークな話にした方が納まりが良かったかもしれない。それにしても松尾スズキはじわじわと怖い。振りはらっても振り払っても女の髪の毛がまとわりつく、みたいな、哀れを含む日本の怪談系の怖さ。

染五郎が自分では芝居のできない小劇団の演出家をやる横で、阿部サダヲが演技過剰な歌舞伎界の異端児をやってるのが可笑しい。サダヲの強引力は最強です。歌舞伎風の所作が妙に上手い。
大竹しのぶのこういう役ばかりを観ているので、ちょっと食傷気味です。普通の人を演じているところの想像がつかない。『奇跡の人』でも観に行けばいいのか。
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2008年07月28日

七月歌舞伎座・夜

七月夜は泉鏡花の2作品。「夜叉ヶ池」には間に合わず、「高野聖」だけ見に行く。女(玉三郎)、宗朝(海老蔵)、次郎(尾上右近)、親仁(歌六)、薬売(市蔵)。
鏡花の言葉は、生身の人間が口にするには難しいなあ、という印象。海老蔵が固い…ストイックだからって棒では困る。
鏡花の作品自体も、実は舞台でやるには難しい。「婦系図」あたりならともかく、妖物・耽美系の作品は、そのまま素直にやると「だから何?」で終わってしまうものもあって、あまり本家の歌舞伎向きではないような気がする。…って、加納幸和@花組芝居の鏡花を見慣れてしまっているせいかもしれませんが。でも、鏡花には狂騒状態の演出が必要だと思うのだ。今回、蛇とか蟇とか大蝙蝠とか猿とかももんがあとかの動きは面白かった。
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2008年07月10日

『SISTERS』パルコ劇場

長塚圭史meets松たか子。他の出演は、鈴木杏、吉田鋼太郎、田中哲司、中村まこと、梅沢昌代。
田舎のさびれたホテル。シェフを務めていた支配人の妻が自殺。妻の友達だった従業員(梅沢昌代)は精神バランスを崩している。料理のできない支配人(中村まこと)は、東京でビストロを開く従弟の尾崎(田中哲司)に料理を教えてくれるよう依頼する。尾崎は新妻・馨(松たか子)を連れてやってくる。ホテルには長年、支配人の妻の兄である児童文学作家(吉田鋼太郎)が、娘の美鳥(鈴木杏)とともに暮らしている。美鳥は東京からやってきた馨に興味を抱き近づく。美鳥との出会いで、馨の記憶のフタが開く。
セットは1個の客室のみ。2つの部屋、過去と現在、現実と想像の二重写しに使われる。壁から床にかけて、大きなひび割れ。

長塚圭史は元々、親子や家族をテーマにした作品が多いが、パルコで上演する作品ではその方向性が顕著だ。毎回、「何でカネ払ってこんな嫌な気分になりにきているんだろう?」と思いながら、その嫌な気分の中毒になって通い続ける訳だが、それでも最近は多少なりともカタルシスを用意して終わるように変わってきた気がする。性的虐待と近親相姦の間を揺れる芝居で、かなりきつい内容だったが、ラストシーンのビジュアルの美しさ(ありがちではあるものの…)に救われる。というか、なし崩しにさせられる?

※ネタバレなので隠しておきます。

ギリシア悲劇を思わせるような終わり方を支えているのが、吉田鋼太郎。日本を代表するシェイクスピア俳優、のはずなのだが、どうも自分が見に行く芝居では情けなかったりひどかったりする役を演じていることが多い。重厚で立派な役は普通に出来てしまうから、演出家としては崩したくなるんだろう。今回も矮小でひどい父親の役だった。
それでも子供にとってはひとりしかいない人なんだよ、と精神の平衡を保つため外界から自ら閉じて狂信的に父を愛する鈴木杏。彼女は本当に、目と声が強くて良い。少女から女性に変わる年頃で、傲慢なほどの一途さの中にまだ幼い印象が残るのも、良いキャスティングだった。
「妹」美鳥に対する「姉」馨。踏みにじられたことよりも、それでも割り切れないものが残っていることが、彼女を精神的に不安定にしている。松たか子については、岩松了演出の『嵐が丘』の印象が強いせいか、普通の常識や理性のある役をやっていると違和感を覚えてしまう(ヤマザキパンのCMとか、むしろ怖い)。一方で、こういう危ういところで振れ続けている人を演じると上手いなあと思う。今回は、ラスト近くの長台詞が迫真、渾身。
癇に障る嫌な人物ばかりの舞台上と、現実世界の客席との接点となっているのが、唯一普通の人の尾崎役、田中哲司。これまではキレる側を演じることが多かったと思うが、長塚演出では『ビューティ・クイーン・オブ・リナーン』に続いて、客席を安心させる役だ。「帰ろう」と馨を迎えに来て、その後を支えきれると見るかどうかで、ラストのカタルシス度は変わるのかなあ。名前が「信助」なんだよね。信じて助ける、と名前のとおりになってくれるといいなあ、と。

上にも書いたように、長塚芝居は作品のエグさのほかに、色彩感覚やビジュアル面のシンボリックな美しさも特徴。今回で言えば、美鳥の衣装、洗濯物、壁のひび割れを伝う水、流れてくる彼岸花。何度も尾崎の持ってきた包丁セットがクローズアップされるが、刃物による流血はなく、物理的なグロさはないのも上手いと思った。

田中哲司、吉田鋼太郎、鈴木杏と、好きな役者を上手く使って作ってくれて、満足の舞台だった。長塚さんは、この舞台の後は1年間のイギリス留学とのこと。戻ってきて何を見せてくれるか、楽しみにしています。

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このところ観に行く芝居と言えば、長塚、スズカツ、ケラ、松尾スズキ、花組、新感線、と決まったものばかりで、ちょっと反省しております。しかし、もはや学生の頃のように、新しい劇団をどんどん開拓していく時間と気力はない。学生時代に芝居を観ていたペースでサッカーを見ているのだから当然か。で、劇場中継やDVDで新しい(若い)演出家の芝居を見ても、よくわからないことも多くなってきていて、感性が摩滅していってるということだろうなーと思います。
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2008年06月01日

歌舞伎鑑賞教室「神霊矢口渡」 国立大劇場

今日は快晴。午後から永田町へ。
はじめに亀寿による歌舞伎の舞台設備や、演目の前説。休憩を挟んで福内鬼外(平賀源内)作の「神霊矢口渡」。鑑賞教室では、前説をすっ飛ばして休憩後から見に来る人も多い。
孝太郎のお舟、市蔵の頓兵衛、亀寿の義峰、宗之助のうてな。初日だったせいか、台詞の入ってない役者さんもちらほらと(苦笑)。歌舞伎座だとあまり感じないのだけれど、他の劇場ではプロンプの声が聞こえやすい気がする。歌舞伎座より音響が良いから?
孝太郎のお舟は2度目ということだが、どうもドタバタして、可愛らしさよりわざとらしさが目に付いてしまってイマイチ。手負いになってからも元気よくて、痛そうに見えない。田之助さんの教えということだったのだが、…うーん。頓兵衛はわざとらしいくらいのカリカチュアライズでいいと思うが、お舟が可憐でないのは感情移入できなくて困る。
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2008年05月20日

歌舞伎座 團菊祭 昼・夜

納品終わった、会社休んで歌舞伎座へゴー! と言っても、元々発売日に平日のチケットを取っている訳ですが。團菊祭です、何を置いても行かざぁなるめぇ。

今月は何と言っても夜の部、「青砥稿花紅彩画(白浪五人男)」の通し上演が目当て。五人男の配役は、当代のベストではないか。日本駄右衛門に團十郎、弁天小僧菊之助に菊五郎、南郷力丸に左團次、忠信利平に三津五郎、赤星十三に時蔵。青砥藤綱も富十郎。駄右衛門がちょっといい人過ぎたか?という気もしないではないが、配役だけで嬉しくなります。稲瀬川谷間のだんまり、稲瀬川の勢揃、どちらも舞台が狭く感じられる。
黙阿弥の狂言は、五代目菊五郎に書いた系統の作品が好きですが、中でも白浪五人男は今で言うならキャラ萌え・シチュエーション萌えの構造をよく活かして作ってある話だと思います。でも歌舞伎の狂言って、基本的にキャラ萌え・シチュ萌え、場合によってはそれだけだと思う。ついでに言うと、白浪五人男は戦隊物のルーツ。
馬鹿話はさておき、菊五郎の愛嬌がこぼれるような弁天小僧が、もう本当に可愛かった。南郷兄ちゃんも可愛がり甲斐があるだろう。仲良さそうで良い。親父様は風邪気味だったようだが、楽まで頑張ってください。菊之助がこの域までいくには、どれだけの時間がかかるだろう(息子世代でやるなら、南郷には海老蔵ではなく松緑を希望)。浜松屋で胸元から縮緬を取り出すのが実にさりげなく、しまうときにはわざとらしく、騙りの技に思わず拍手したくなる(笑)。
極楽寺屋根上の立ち回りで次はどう来るとワクワクさせるのが、さすが菊五郎劇団。縄を上手くかけ回して抜けて出るのとか、上手いなあ。がんどう返し(これを考えた昔の人はすごい!)でギリギリまで菊五郎が踏みとどまっていて、怪我しないかハラハラした。追い詰められてクタクタになって、一人で先に死んでいく弁天小僧が潔くも哀れ。香合を落とされるところは、もうちょっとショックを受けてもいいと思うが、歌舞伎でその芝居はないか。
通しで見ると、こういう話でここに繋がるのだったのか、と改めて気がつくことも多い。胡蝶の香合の重要度が増すので、弁天小僧の最期が引き立つと思う。続く駄右衛門と青砥のやり取りで香合が拾い上げられており、弁天小僧の心残りが晴れたとわかって安心して幕(すみません、弁天小僧を軸に見てるもので…)。

夜の部の最後は松緑の「三升猿曲舞」。長い話の後に楽しくキリッとまとまった踊りで、良いエンディング。


昼の部は、三津五郎の「喜撰」が良かった。こういう軽妙な踊りが本当に上手い。お梶は時蔵、やわらかく、ちょっといたずら者な感じ。
昼の最初は「義経千本桜」の渡海屋〜大物浦。海老蔵の知盛は…一人で熱演してる気が…。
最後は「幡随長兵衛」。團十郎の長兵衛、菊五郎の水野。この二人の取り合わせで、團十郎の方が町奴というのは、個人的には違和感がある。でも、黙阿弥はこれを九代目團十郎にあてて書いた訳で、演じるならやっぱり團十郎が長兵衛ってことになるんだろう。


久しぶりに昼夜通しは疲れた。歳だな。
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2008年04月14日

『49日後…』PARCO劇場

作:竹内佑(デス電所)、演出:池田成志。出演は古田新太、八嶋智人、池田成志、松重豊、小田茜。
見終わって、makiさんとの第一声が2人とも「これは、アレだよね」と揃った。アレというのは『VAMP SHOW』のことなのだが、別にパクリというのではなくて、モチーフが似ている。演出が似ているのは、『VAMP SHOW』も池田成志の演出(初演は板垣恭一と共同演出)だったのだから、当然と言えば当然。こういうモチーフで、と成志と古田新太が脚本家に伝えて書いてもらっているのか、自由に書いてもらったらこういう話になったのか、どっちだろう。何にせよ、成志はホラーが好きだねえ。
似てるなと思うと違うところを比べてしまう訳だが、前段(?)の男4人がグダグダとくだらない無駄話を続けるあたりの必然性が、今回は薄いように思う。そっちは減らして、人間関係の謎解き部分を膨らませる方が良かったんじゃないのか。役者が上手いだけに、どうももったいなさが残る脚本だった。
久し振りに松重豊を舞台で見た。今回はいい人役で、デカい身体を小さくかがめて演じる様子が可愛いのだが、また怖い役も見たいです。でも本人がもう、そういうのは飽きちゃったのかもしれん(『地獄の警備員』とか、ZAZOUS THEATERとか)。
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2008年03月10日

三月歌舞伎座 夜

芝翫の白井権八、富十郎の幡随院長兵衛で「御存知鈴ヶ森」。富十郎の長兵衛は、偉すぎなくて好きだ。どうでもいいけど、「浮世柄比翼稲妻」は因州(鳥取)を発端とするお話。平井権八屋敷跡の碑が学校の近くにあったけれど、実は実在の人物かどうかは不明なのだ(笑)。

藤十郎の喜寿記念、「京鹿子娘道成寺」。道行の衣装が、ちゃんと藤色であった。上方の道成寺は初めてだったが、何と言うか、派手ですね。それにしても、これで喜寿というのだから、歌舞伎役者さんは恐ろしい。藤十郎の花子ちゃんは、遅刻遅刻とトースト銜えて走っていって曲がり角で転校生とぶつかりそうな感じがします。今回は押し戻しのあるバージョンだったが、踊りのストーリーとしては鐘入りせずに上にのぼってあっさり終わる方がまとまりが良い気がする。

最後は菊五郎の佐七、時蔵の小糸で「江戸育お祭佐七」。以前に見た仁左衛門の佐七はいなせできりりと強気だったが、菊五郎の佐七はちょっと情けなくて格好つけのやせ我慢。時蔵の小糸と2人、純真で騙されやすい感じ。団蔵の倉田伴平、家橘のおてつがまた憎々しくて、好対照でした。
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2008年01月21日

志の輔らくごinPARCO PARCO劇場

PARCOの志の輔らくごは、元々年末に行われていたが、昨年から新年1月に行われるようになった。毎年3席。例年は初めに軽め(?)の新作を2つ、中入後に古典の人情もので締めて終わるという流れだったが、今年は映画の公開記念ということで、初めに新作「異議なし!」と古典から「宿屋の富」、中入後に「歓喜の歌」。「歓喜の歌」は2004年初演時にはPARCOの2席目だったので、今年の志の輔らくごは、最後までわーっとウキウキしたまま終わった感じ。
「歓喜の歌」はタイトルからもわかるように、本来は暮れのネタ。「宿屋の富」も宝くじだから、どちらかと言えば年末向けかも。スケジュールの都合で、ちょっと季節がずれてしまいました。

「異議なし!」。タイトルはカプコンのゲームのパロディか? マンションのエレベーターに監視カメラを設置するかどうかを、ビール飲みつつあーでもないこーでもないと話し合う自治会の衆。会議は踊る、されど進まず。くだらなくて良かったが、つなぎの締約国会議の映像(ニュース映像に、テキトーな字幕をつけたもの。どうでもいいけど正式名称が長過ぎる=「気候変動枠組条約第13回締約国会議・京都議定書第3回締約国会合(COP13・COP/MOP3)」)が面白すぎて、そっちに持って行かれてしまいました(苦笑)。

「宿屋の富」。志の輔さんの馬鹿馬鹿しい系の古典は珍しい? 法螺吹きも“富籤が当たったら”妄想もたっぷり。法螺吹きのところで、宿の亭主のお人好しさ・純真さがもっとあると良かった。主人公と亭主の、籤の番号を確かめるボケっぷりと、狼狽っぷりが可笑しい。

「歓喜の歌」。初演より枝葉を整理。すっきりしたけど、“ここ、クドくやるところ”“ここ、感動しどころ”というのがわかりやすくなり過ぎた気も。あらすじを覚えているから、そう思ってしまうのかな。
映画の公式サイトを見ると、“ガールズ”と“レディース”でグループの性格を分けてあるのね。原作の落語だとその辺はひとくくりだから、話を膨らませるには上手いやり方かと思う。

それにしても、休憩も入れて3時間の独演。1ヶ月公演。よく喉がもつものです。素晴らしい。

mixiで「食べたい」と書いていたら、納富さんが買ってきてくださいました。わーい!おいしゅうございました!

肉球2 肉球1
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2007年12月10日

『ビューティ・クイーン・オブ・リナーン』PARCO劇場

マーティン・マクドナーの処女作にしてリナーン三部作のひとつ。長塚圭史演出。大竹しのぶ、白石加代子、田中哲司、長塚圭史。アイルランドの片田舎で閉塞した生活を送る母娘。何だかもう、母・白石加代子、娘・大竹しのぶという配役を見ただけで怖い。
かつて自分が閉じ込められてきた復讐をするように、娘モーリーンを束縛しようとする母マグ。芝居の内容とはまったく関係ないことだが、マグから連想する人があるため見ていて苦痛だった。白石加代子の表情が、また似てるんだ。思い返すのはストレスなので、モーリーンとマグの壮絶な悪意の応酬についてはパス。
パト役の田中哲司が清涼剤でした。相変わらず格好良い。そして相変わらずエロス担当。無意識に火種を振りまいていく(そして去っていく)役が多い気がする。演出家から見てもそういうイメージなんだろうか。
レイ役は、公演直前になって黒田勇樹が体調不良で降板し、長塚圭史になった。少々無邪気さに欠けるのは仕方がないが、本当はここでもっと悲劇がひき立つはずだったんだろうなーと思う。
ほぼマグとモーリーンの家のダイニングキッチンが舞台だが、2部の始めだけセットが少し前後に動いて、落書きされた壁が現れ、それだけでロンドンのパトの部屋になるのが上手かった。
幕切れで、ロッキングチェアに母そっくりの様子で座っていたモーリーンが立ち上がり、スーツケースを片付けに出て行くのだが、あれは母と同じ鎖に自ら繋がれに行くのではないと思いたい。そのためのラジオのリクエストだったんだと思うのだが。
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2007年12月07日

『KANADEHON 忠臣蔵』花組芝居 世田谷パブリックシアター

全十一段の『仮名手本忠臣蔵』を2時間半に詰め込んだジェットコースター芝居。一気に観ると、ああこういう話の流れか!と改めて気がつくこともあって面白かった。

歌舞伎で「仮名手本忠臣蔵」全十一段を通し上演する場合、丸1日がかりとなる。それを2時間半で演じきろうというのだから、快挙であり暴挙。よくまとめたものだ、と石川耕士の脚本に感心する。しかも、ただのあらすじでは終わっていないのだ。
ポイントとなる場面を押さえて話はサクサク進んでいくが、起(高師直の顔世への邪恋)〜承(塩冶判官自害)〜転(由良之助ルートとお軽勘平ルートに分岐して再合流、由良之助ルートの結びとして加古川本蔵との因縁決着)〜結(天河屋義平から武器を入手し討ち入りへ)のダイナミックな流れが感じられ、全十一段でひとつの大きな物語であることがよくわかる。基本は歌舞伎に忠実に、少しだけギャグも取り交ぜてテンポがいい芝居。
大きなセットを使わない舞台美術も、全体のグルーヴ感を殺がないように工夫されていた。舞台幅を4分割して天井から互い違いに定式幕を垂らし、必要に応じて4ヵ所の幕を上げ下げして場面転換を行う。衣装は歌舞伎の定式だが、岡田嘉夫(オススメ)の描く揚羽蝶が儚く華やか。かと思えば、音楽は力強いアフリカンミックスの三味線。全体のバランスがとても良かった。

配役もそれぞれ「似合う似合う」と納得のいくものだったが、何と言っても白眉は九段目、山科閑居の場。座長の戸無瀬、山下さんのお石で火花散る散る女形対決! もうこれだけで満足です〜ありがと〜(うっとり)。植本さん(今回はお軽)も愛嬌を振りまく素敵な女形だが、座長vs植本ではこの迫力は出ない。配役の妙。お軽も恋しちゃってウキウキな感じで可愛かった!
女形対決に押されて九段目の本蔵(溝口)vs由良之助(桂)はやや影が薄かったが、それぞれ、二段目、四段目で主君や同輩と絡むところは良かった。桂さんもこういう腹の据わった役をやるようになったのかーと感慨深い。七段目で、分岐したストーリーを再びひとつの流れに引きまとめたのは、桂さんの手柄だろう。
あと、配役の妙と言えば水下さん。この人に「天河屋義平は男でござる」って言われるとクラクラしますね!

十一段目(討ち入り)は決まったストーリーや型のない場面だが、今回はたくさんの戸板/襖が行きかうスピード感のある殺陣で、周り道せずに師直を討ち取るところまで。格好良い。もっとたっぷりでも良かったが、さすがに時間が足りないね。

終幕後、加納座長による短いアフタートーク。毎日一段ずつ解説しているようで、この日は九段目。色彩の見事さは、十一段中随一、と。戸無瀬の緋色、小浪の白、お石が鼠と黒、力弥は江戸歌舞伎は黄八丈だが上方は紫でちょっと色っぽく(今回の衣装は上方風)。
ああ、面白かった!

余談。赤穂藩の家臣は総勢300人強だったのだそうで、仇討に参加したのはそのうち47人、約1/6(1/7?)。この数は多いのか、少ないのか。現代人の感覚だと十分多い気もするんだが、相手は「武士」で「主従」だからなあ。でもこの時代でもすでに時代錯誤な事件だったんだよなあ。忠臣蔵は、史実について調べるのも面白い。
元禄赤穂事件(Wikipedia)
脱盟者たちの忠臣蔵(NHK・その時歴史が動いた)
平穏な江戸中期に波風が立つことによって、当時のシステムや心情が透かし見えてくる。

もうひとつ余談。フォービアン・バワーズによる戦後初の忠臣蔵のキャスティング、見られるものなら見てみたかったですねえ。権力を持ったマニアは素晴らしいね(笑)。
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